今、住宅業界で大きな話題となっているのが「GX志向型住宅」です。GX志向型住宅とは、2023年2月10日に日本で閣議決定された「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」に基づいた「脱炭素社会を目指し、再生可能なクリーンエネルギーを活用して一次エネルギー消費量ゼロを実現する次世代型の省エネ住宅」です。
従来の省エネ住宅として知られる「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」がこれまで省エネ住宅の基準とされてきましたが、「GX志向型住宅」はZEH住宅を上回る性能を持った住宅です。
さらに、2024年11月29日に閣議決定された「子育てグリーン住宅支援事業」を活用することで、GX志向型住宅を新築する際に最大160万円の補助金を受け取れる可能性があります。
ここでは、新築の注文住宅に焦点を当てた「GX志向型住宅」の特徴や、メリット・デメリット、補助金の詳しい内容、ハウスメーカー別のGX志向型住宅への対応について解説します。
GX志向型住宅とは
「GX志向型住宅」とは、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)など、従来の省エネ住宅の水準を大きく上回る省エネ住宅を対象とする補助制度「子育てグリーン住宅支援事業」の新区分として新たに設けられた住宅です。
近年、環境問題が注目される中、GX志向型住宅は、未来のために地球と共に暮らす住まいとして注目を集めています。自然を大切にしながら、住む人にとって心地よい暮らしを提供するのが目的です。
GX志向型住宅への取り組みはハウスメーカーごとに異なるため気になるハウスメーカーの対応状況はカタログを取り寄せて確認してみましょう。
子育てグリーン住宅支援事業とは
環境に優しい省エネ住宅の普及を促進しながら、子育て世帯や若年層の家づくりやリフォームをサポートするための国の補助金制度です。この事業は、地球温暖化対策の一環として、省エネ性能が高い住宅を選ぶ人を支援し、同時に子育て世帯や若い世代の住宅取得を後押しする目的で行われています。
参照:国土交通省ホームページ「子育てグリーン住宅支援事業の概要」
GX志向型住宅の条件
GX志向型住宅の条件は上記の3つ。それぞれ詳しく解説していきます。
断熱等性能等級6以上
断熱等性能等級6以上(HEAT20 G2以上)の住宅は、断熱性能が非常に高く設計されています。高性能な断熱材や窓を用いることで冬は暖かく、夏は涼しい快適な空間を実現します。断熱性能を高めることで、冷暖房の使用を抑え、光熱費が大幅に削減できる可能性があります。また、断熱性能の高い住宅は省エネ性能が評価され、資産価値の向上にもつながります。
再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量の削減率「35%以上」
「再生可能エネルギー」とは、例えば太陽光発電で作られるエネルギーのことです。そして、「一次エネルギー消費量」とは、冷暖房、給湯、照明、換気といった住宅で使うエネルギーの総量を指します。
再生可能エネルギーを使わずに、家で使うエネルギーを35%以上削減することが基準となっています。達成するためには、基準となる外皮性能と高性能な給湯器(エコキュートなど)や高効率エアコンなど省エネ性能の高い設備を組み合わせることが必須条件です。
再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率「100%以上」
削減した一次エネルギー消費量と太陽光発電などで創った再生可能エネルギーを組み合わせることで、家庭で使うエネルギーを実質的にゼロにすることを目指します。削減率を100%以上にするためには省エネ設備に加えて「太陽光パネルの設置が必須」となります。なお、寒冷地等の戸建て住宅の場合、この削減率は75%以上とされています。
断熱等性能等級とは
住宅の断熱性能がどのくらいかを示す等級です。等級は1~7の7段階あり、数字が大きいほど断熱性が高いことを示します。等級を満たすには、それぞれの基準を満たすように断熱材や開口部などの建材を選ぶ必要があります。断熱等性能等級6は、「HEAT20」G2と概ね同等で「平成28年 省エネ基準」よりも、暖冷房にかかる一次エネルギー消費量を約30%以上削減できることが条件です。
断熱等級4の義務化
住宅の断熱性能を示す「断熱等性能等級」について、2022年10月に新しい等級「6」と「7」が加わりました。断熱性能等級の引き上げによって、住宅を建てる際に求められる基準がより厳しくなっています。2025年度以降、新築住宅を建てる際は「断熱等級4」が義務化されます。
これまでは最高等級とされていた等級4ですが、今後は「最低限守るべき基準」となります。そして、2030年には、省エネ基準がさらに厳しくなり、「断熱等級5」がすべての新築住宅で求められる最低基準になる予定です。断熱等級5は現在の「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の基準と同等であり、今では高性能とされているZEHが、将来的には標準となります。さらに、過去の最高等級であった「等級4」では2030年以降、新築住宅を建てることができなくなる予定です。
ZEH住宅や長期優良住宅との違い
「GX志向型住宅」は、ZEH住宅、長期優良住より、さらに厳しい省エネ基準や柔軟な補助金適用範囲を持つ点が特徴です。以下で従来の省エネ住宅との違いを解説します。
ZEH住宅との比較
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、「省エネ」や「創エネ」で「年間のエネルギー収支をゼロ以上にすることを目指した住宅基準」のこと。子育て世帯や39歳以下の若年層が中心で、補助金額は新築の場合、40〜60万円支給されますが、GX志向型住宅の補助金(最大160万円)に比べて少額です。
長期優良住との比較
長期優良住宅は、国が定めた「長期優良住宅認定制度」の基準をクリアした住宅のこと。耐震性・省エネルギー性・居住環境・劣化対策などが適用されているので長く快適に住むことができます。
長期優良住宅の補助金は最大100万円。GX志向型住宅は160万円が支給されます。長期優良住宅は断熱性能等級4(UA値0.87以下)が基準ですが、GX志向型住宅はさらに高い断熱性能等級6(UA値0.46以下)を満たす必要があります。
補助金額と対象一覧
対象世帯 | 対象住宅 | 補助額 |
---|---|---|
すべての世帯 | GX志向型住宅 | 160万円/戸 |
子育て / 若者夫婦世帯 | 長期優良住宅 | 80万円〜100万円/戸 |
子育て / 若者夫婦世帯 | ZEH水準住宅 | 40万円〜60万円/戸 |
従来の省エネ住宅とGX志向型住宅の最も大きな違いは「補助金の最大額が100万円から160万円に増額された」「補助金がもらえる対象が新築住宅を建てる(リフォーム含む)全ての世帯が対象」であることです。GX志向型住宅は、ZEH住宅や長期優良住宅の良い点を取り入れながら、どちらともを超える性能基準を目指しています。補助金額や省エネ性能の面でも、家族と地球環境の両方に優しい選択肢となっています。
GX志向型住宅への取り組みをハウスメーカー別に紹介
一条工務店のGX志向型住宅
東京都に本社がある一条工務店さんは、2024年度に年間約16,000棟以上の販売戸数実績を持つ工務店です。同年、圧倒的な断熱性能を持つ新仕様の「断熱王」を発表し、2022年に新設された断熱基準の最高等級「断熱等級7」に対応可能な住宅を提供しています。また、「全館床暖房」や「太陽光&蓄電池」を採用しているため、住宅性能環境省・国土交通省発表のGX志向型住宅に対応できる可能性があります。
「断熱王」の対象商品は現在「グラン・スマート」「アイ・スマート」の2種類のみとなっています。
断熱王の主な仕様・性能
- UA値「0.25W(㎡・K)」C値「0.59㎠・㎡」でHEAT20 G3水準
- Q値「0.51W(㎡・K)」で国の基準の5倍の性能
- U値「0.46W(㎡・K)」の超断熱玄関ドア「DANNJU(ダンジュ)」
- 冷暖房費が6分の1になる「外内ダブル断熱構法」
- 家中が快適な温度になる「高性能ウレタンフォーム」
- 断熱性・防犯性の高い「防犯ツインLow-Eトリプル樹脂サッシ」
- 室内の空気が常にきれいになる熱交換換気システム「ロスガード90」
- 玄関全体の断熱性能を上げる「断熱玄関土間」
- 節電・蓄電ができる屋根一体型の「大容量太陽光発電」
- いつでも暖かく素足で過ごせる「全館床暖房」
- 断熱性能を確保するための「開口率計算」
セキスイハイムのGX志向型住宅
全国各地に住まいを提供しているセキスイハイムさんは、「断熱性・日射性・結露防止対策」を行い「断熱等級6」を標準化しています。
エネルギー自給自足型のサステナブルな暮らしを目指し、省エネ・創エネができる家づくりを行なっており、GX志向型住宅に対応できる可能性のある「Smart Power Station Plus(スマートパワーステーションプラス)」や、SMART&RESILIENCEシリーズの「GREEN MODEL(グリーン・モデル)」「Vehicle to Home (VtoH住宅)」などの商品を提供しています。
セキスイハイムの主な断熱仕様・性能
- UA値「0.46W(㎡・K)」で断熱等級6を標準化
- 窓の断熱性能を高めるアルゴンガス入りの「トリプルガラス樹脂サッシ」
- 天井と外壁、室内1〜2階間に断熱性・施工性・耐久性・耐火性に優れる「高性能グラスウール」を採用
- 断熱性・耐水性に優れ足元の冷気を遮断する「押出発泡ポリスチレン」
- 最大5500Wまで同時利用できる「大容量ソーラー」搭載
タマホームのGX志向型住宅
タマホームさんは東京都に本社ビルを構え、2022年と2023年の2年連続で年間約10,000棟以上の引渡実績を持つハウスメーカーです。「高耐候・高断熱・高耐久・省エネ」の4拍子が揃った「HEAT20 G3水準 UA値0.23W/(㎡・K)」を実現した自由設計の「えがおの家」を販売しています。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて長く快適に暮らせる家づくりを行なっており、GX志向型住宅に対応できる可能性があります。
また、自由設計の家1棟あたりの平均販売価格は、約2,000万円〜です。ご家族のご要望に合わせたさまざまなプランが用意されています。
えがおの家の主な仕様・性能
- UA値「0.23W/(㎡・K)」でHEAT20 G3水準
- 年間一次消費エネルギー量を「約29%削減」した省エネ住宅
- 高気密・高断熱で年間の冷暖房費を「約2.7万円」削減
- 「高耐候・高耐久」と「太陽光発電」で住み続けるコストを大幅削減
- 年間電気代を「約85%削減」できる「太陽光発電」
- PM2.5に対応した「全熱交換型24時間換気システム」
- 電気代の節約ができる「外壁ダブル断熱」
- 広い間取りでも床下の冷気侵入を抑える「基礎ダブル断熱」
- 結露防止・防カビ・防ダニできる「樹脂サッシ+Low-Eトリプルガラス」
- 部屋と玄関との温度差をなくして快適に過ごせる「高断熱玄関ドア」
- 予算に合わせた自由な家づくりができる自由設計の家
大和ハウスのGX志向型住宅
「人生を豊かにする自由設計」をコンセプトに全国で住まいを提供している大和ハウスさん。商品ラインナップのうちの1つである「XEVO GranWood(ジーヴォ グランウッド)」が断熱性能の高い注文住宅のため、GX志向型住宅に対応できる可能性があります。
XEVO GranWood(ジーヴォ グランウッド)の主な仕様・性能
- 断熱等性能等級5(ZEH 基準)が標準
- 要望に合わせて「断熱等性能等級6・7」に対応可能
- 柱の外側で断熱、壁に遮熱効果を持たせた「遮熱外張り断熱工法」
- 断熱性に優れた「樹脂サッシ+日射遮蔽型複層ガラス」を採用
- 自然の「光」と「風」を活かして快適に暮らせる「パッシブデザイン」の家
- 創エネできる太陽光発電システムを採用
- 発電や省エネ給湯ができる設備がある
- 超寿命のLED照明を採用
住友林業のGX志向型住宅
木の力を活かした住まいで、カーボンニュートラルな社会への貢献を目指している住友林業さん。家を実際に建てたお施主様への満足度アンケートでは「設計満足度99.2%」となっており、快適な住宅を提供していることを証明しています。「魔法瓶のような家」をつくるため「360°TRIPLE断熱」で「ZEH強化外皮基準」を上回る高い断熱性能を実現していることから、GX志向型住宅に対応できる可能性があります。
※満足度アンケートは、2022年1月〜2023年12月に10,595名を対象に調査されたものです。
住友林業の主な断熱仕様・性能
- 寒冷地と同水準のUA値「0.46W(㎡・K)」
- 構造材、壁・天井・床、窓で断熱する「360°TRIPLE断熱」
- 断熱材を隙間なく敷き詰め、家全体をすっぽり覆う魔法瓶のような家
- コントクリートの約13倍、鉄の約440倍も断熱性に優れた木を構造材に使用
- ダウンのような細かく量が多い植物由来の「グラスウール」を断熱材として採用
- 空気比べて約1.5倍の断熱性がある「アルゴンガス入り Low-E複層ガラス」を採用
- 省エネ機器を導入(太陽光発電・エネファーム・高効率エアコンなど)
アイ工務店のGX志向型住宅
アイ工務店さんは「もっと楽しく、ずっと快適に。」をコンセプトにカーボンニュートラルな社会の実現に向け、省エネ性能をより高めるための住宅「N-ees」を中心に「W断熱」や「高性能トリプルガラスサッシ」を採用したUA値0.4以下、C値0.5以下の断熱性能の高い住まいを提供しています。業界最高水準の高気密・高断熱の家づくりをしていることから、GX志向型住宅に対応できる可能性があります。
N-essの商品ラインナップには、時代に合わせてリニューアルした高断熱仕様の「N-ess」、クラシカル・モダンな「N-ess Urban」、ナチュラルテイストの「N-ess Natural」があります。
N-eesの主な仕様・性能
- 温度ムラを抑制し快適に暮らせる「N-eesオリジナル ダブル断熱工法」
- 標準仕様で最も基準の厳しい北海道エリアの「断熱等級5」の断熱性能
- UA値「0.4W(㎡・K)」以下(HEAT20 G2水準)
- C値「0.33㎠・㎡」(平均実測値)
- 第三者機関による全棟気密測定を実施
- 内部結露・防カビ・ダニ、木材の腐食から住まいを守る「吹付発泡ウレタン断熱」
- 防露・防音・紫外線カット・熱ロスを防ぐ「高性能断熱サッシ」「Low-Eトリプルガラス」
- オプション仕様で太陽光発電・蓄電システム・高効率エアコン・給湯・LED照明などが選べる
三井ホームのGX志向型住宅
「木」を知り尽くした三井ホームさんの提供する住まいは「断熱等級7」を実現した「MOCX THERMO」。最高レベルの断熱性能を持つ家づくりを行なっているため、GX志向型住宅に対応できる可能性があります。
MOCX THERMOの主な仕様・性能
- UA値「0.26W(㎡・K)」(HEAT20 G3水準)
- 外気の影響を受けにくい快適な室温を実現する「超高断熱内外ダブル断熱」
- CO2排出量を約6割削減する「超高断熱トリプルガラスサッシ」
- 熱貫流率「0.90W(㎡・K)」の「超高断熱玄関ドア」
- 床・壁・屋根が組み合わさって耐久性と断熱性を実現した「プレミアム・モノコック構法」
- 太陽光発電・エネファームのダブル発電で、光熱費を約103,000円軽減する「未来発電G」
アキュラホームのGX志向型住宅
嵐の相葉 雅紀さんが「相葉店長」として登場するTVCM「相葉店長シリーズ」でおなじみのアキュラホームさん。キリンも暮らせる5.6mの天井高のある「超空間の家」が子育てグリーン住宅支援事業に新設されたGX志向型住宅に対応しています。
※対象面積:延床面積50㎡以上・240㎡以下
※先着順で予算がなくなり次第終了
超空間の家の主な仕様・性能
- GX志向型住宅に対応可能
- ZEH基準を超える「全棟断熱等級5」が標準仕様
- BEI0.8以下の「一次エネルギー消費等級6」
- 室内が1年中快適な全館空調システム「匠空調」を採用
- AQダイナミック構法を用いた壁・柱のない家
- 長期保証のついた「長持ちする家」
- 自然災害に強い家
- 約5.6mの天井高のある開放的な家
- 完全自由設計の家
ヤマト住建のGX志向型住宅
兵庫県に本社のあるヤマト住建さんでは、環境省・国土交通省発表のGX志向型住宅支援に対応した新商品&特別キャンペーンを発表しました。
全国限定50棟、補助金の条件をすべてクリアした特別仕様をキャンペーン価格2,250万円(28坪〜/税込・付帯工事別)で案内中です。
※キャンペーン期間は2024年12月28日(土)まで
ヤマト住建の主な断熱仕様・性能
- UA値0.32/C値0.5以下でHEAT20 G2グレードをクリア
- 内と外に断熱材を入れることでさらに断熱効率をアップした外W断熱工法
- 断熱性能・結露防止・防音効果のある高性能樹脂サッシトリプルガラス
- 地震にそなえる油圧式ダンパー制振装置 evoltz(エヴォルツ)
- 給湯に必要なエネルギーを抑え電気代を軽減するプレミアムエコキュート(370ℓ)
- 半永久的に効果がある防蟻処理剤エコボロン
GX志向型住宅のメリット・デメリット
メリット
- 補助金を受けられる可能性がある(子育てグリーン住宅支援事業など)
- 光熱費などのランニングコストを大幅削減
- 住宅ローンの優遇措置を受けられる可能性がある
デメリット
- 初期費用がかかる
太陽光パネルの設置や高性能な省エネ設備、断熱性の高い断熱材などを用いることで初期費用が高くなることが予想されます。
初期費用を減らすポイント
GX志向型住宅を建てることにより受けられる「子育てグリーン住宅支援事業」の補助金支援に加えて、国や地方自治体独自の補助金や助成金支援を受けられる可能性があります。GX志向型住宅で家づくりを検討するなら、補助金助成金を組み合わせて、初期費用を少しでも減らすことをおすすめします。
まとめ:GX志向型住宅を損せず建てて快適に暮らそう
GX志向型住宅は初期費用がかさむデメリットはありますが、最大160万円の補助金支援が受けられる「子育てグリーン住宅支援事業」や国や自治体の補助金・助成金支援を受けることで負担を減らして建てることができます。
将来、家族と長く快適に暮らすためにも、GX志向型住宅での後悔のない家づくりを検討することをおすすめします。